大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)670号 判決

被告人 船越仁

〔抄 録〕

原判決挙示の証拠によれば、被告人は、飲食代にも事欠き、空腹に堪え兼ねて、深夜原判示被害者浅沼美音方に金品窃取の目的で押し入つたが、同女の寝乱姿を見て急に姦淫の意慾を起して、被害者の上に覆いかぶさり、同女の口をふさぐの暴行に出でたところ、これに目を覚し、これが暴行に畏怖して反抗を抑圧された同女から目的を聞かされて金を要求したら、同女が素直にこれに応ずる言動に出でたので、もともと金品を奪取せんことに在つた被告人は、姦淫はこれを思い止まり、同女の畏怖に乗じて原判示金品を強取したものであることが明らかであつて、たとえ、被害者に対してした暴行の所為の直接の意図が姦淫に在つたとするも、これが暴行によつて反抗を抑圧された被害者の畏怖に乗じ、同人から金品を強取するにおいては、強盗の罪の成立ありというべきをもつて、(昭和二四年(れ)第一八九八号同年一二月二四日第二小法廷判決―最高裁判所判例集第三巻第十二号二一一四頁―参照)被告人の右所為は到底強盗罪の成立あるを免かれない。尤も、本件被害者は、被告人が、前示暴行に出でた際、被告人の意図が姦淫に在るもののように察してこれに応ずるが如き言動を、一見平静のうちに金品を交付した如き言動の在つたことは、これを窺がい得ないわけではないが、これはすべて、被害者方居人が女子だけで、二階には十八才と二十二才のうら若い婦女が就寝しており、事を荒立てて、却つて、これら若い婦女達に危害の及ぶべきことをおそれた結果であることが看取され、被害者が、被告人の前示暴行に畏怖して反抗を抑圧されたものであることは、到底これを否定することはできない。被害者の右言動の故をもつて、強盗の罪の成立に消長のあるべきかぎりではない。従つて被告人の本件所為をもつて恐喝の罪であると主張する所為は採用し難い。原審が、証拠により原判示事実を認定して被告人を窃盗の罪に問うたことは究極において正当である。原判決には各所論にいうような事実誤認はなく、記録によるも、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認はない。

(三宅 河原 遠藤)

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